漢方治療と皮膚疾患 | 札幌中央区ニキビ・アトピー治療なら宮の森スキンケア診療室

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漢方治療と皮膚疾患

一般的に行われている治療はいわゆる西洋医学的治療です。
それぞれの疾患や症状に対して様々な手段で直接働きかけて治療を進めます。
これに対して東洋医学的治療、いわゆる漢方治療とは、疾患や症状に対しても働きかけますが、それぞれの患者さんの体格や体力、病気の性状や病勢を東洋医学的に把握し、その人に合った漢方薬を選択し治療を行うものです。
当院では、漢方治療を積極的に取り入れています。

漢方治療の基本

病気の部位(病位):表・裏

体表部(皮膚。皮下組織、筋肉)を「表」、身体内部の臓器、消化器などを「裏」と表現します。
病気が初期あるいは軽度であると表にとどまり、進行すると裏に至ります。

病気の性状(病性):熱・寒

顔色が赤く、興奮的で熱を帯びている状態を「熱」、顔面が蒼白で、手足が冷えるような状態を「寒」と表現します。

病気の勢い(病勢):実・虚

充実、頑健、緊張があり、病気に対する抵抗力がある状態を「実」と言います。
このような反応を示す体質の人を「実証」と表現します。
一方、空虚・虚弱で緊張がなく、病気に対する抵抗力が少ない状態を「虚」と表します。このような反応を示す体質の人を「虚証」と言います。

気血水(きけつすい)

病気の状態を「表・裏」「熱・寒」「実・虚」で表す一方、病気の原因を「気」「血」「水」の3要素で表します。
「気」とは、生きていくためのエネルギーのようなものです。例えば、元気のない疲れやすい状態を“気虚(ききょ)”といいます。うつ状態のように気が停滞した状態を“気鬱(きうつ)”といいます。
「血」とは、西洋医学的には血液やリンパ液に例えられます。全身の組織や器官に栄養を与える機能を持つものです。血の流れが悪くなった状態を“瘀血(おけつ)”と言い、月経異常、肩こり、のぼせや冷えなどをきたします。また血が不足した状態を“血虚(けっきょ)”と言い、眼の疲れ、皮膚の乾燥などの症状をきたします。
「水」とは、血液以外の水分や体液を表します。水に異常が起こり、水分や体液が偏在する状態を“水毒(すいどく)”や“水滞(すいたい)”といわれます。この際、むくみや排尿障害、めまいなどが起こるといわれています。

以上のような、病位・病性・病勢、気血水、
そしてその他に病期(太陽病、小陽病、陽明病など)、五臓六腑などの概念を通してそれぞれの患者さんの病態を把握します。

漢方治療と皮膚疾患

診察の際に病状を視診、問診にて把握し、さらに脈診(浮脈・沈脈など脈の状態をみる)、
舌診(舌苔、うっ血、むくみなどを観察)、時に腹診などで詳しく病位・病性・病勢を把握します。
さらに気血水の状況から病因を探っていきます。
その上で効果的な漢方薬を選択します。
1種類だけでなく、時に2種類、3種類になることもあります。

ニキビの漢方治療

①ニキビの性状で選択する。

感染・炎症が強く(熱)、化膿傾向の強い場合、感染を抑え炎症を抑える“清熱剤(熱をとる)“を選択します。
個々のニキビの性状、体質、体格などを参考に漢方薬を選択します。
十味敗毒湯、清上防風湯、黄連解毒湯、荊芥連翹湯、排膿散及湯など。

血(おけつ)があるかないか。

血流が滞る血の状態では、様々な症状が出現します。手足が冷たいなどの冷え症、むくみ、便秘、生理痛や生理不順など。
このような状態の時、特に女性の場合、頑固なニキビが見られることがあります。
“駆血剤(血をとる方剤)”と言って、これらの症状に効果的な漢方薬を使います。
桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、加味逍遥散、桃核承気湯、温経湯など。

③胃腸機能と関連してないか

胃腸機能が衰え(脾虚)ていたり、また胸やけや吐き気を伴ったり(胃気逆)する時に、口の周りにニキビが出ることがあります。
これらを改善する漢方薬を使うと効果的な場合があります。
六君子湯、半夏瀉心湯、補中益気湯など。

アトピー性皮膚炎の漢方治療

①皮疹の性状で選択する。

炎症が強く掻痒が高度な皮疹(熱)には、熱をとる“清熱剤”が効果的です。
その中でも分泌物が多い(水滞の一種)皮疹であったり、慢性化し新旧混在した皮疹が見られたりする場合もあり、それぞれの状況に応じて漢方薬を選択します。
黄連解毒湯、荊芥連翹湯、柴胡清肝等、越婢加朮湯、白虎加人参湯など。

②気力、体力が低下していないか。

アトピー性皮膚炎が長期間にわたると、気虚に陥ります。気虚を改善する“補気剤”が必要な場合が多くあります。
また皮膚の乾燥が著明となり血虚の状態と言えます。血虚を改善する“補血剤”が効果的なことがあります。
補中益気湯、十全大補湯、人参湯、四物湯、酸棗仁湯、八味地黄丸など。

③ストレスが悪化の原因となっていないか。

アトピー性皮膚炎の治療をしている人の中には、ストレスで著明に悪化する人がいます。
実際ストレスはアレルギー症状を悪化させることが分かっています。
ストレスによるイライラ(気滞)の改善がアトピー性皮膚炎の改善につながることがあります。
抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、半夏厚朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など。

その他、尋常性乾癬、慢性蕁麻疹なども漢方薬選択の基本は同様です。
西洋医学的治療で改善が乏しい皮膚疾患に対し、漢方治療の選択は有効な場合が多くあります。当院受診の際にご相談下さい。

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